旅の前に整えたい、お薬と健康のしたく
普段の薬、念のための常備薬、保険証のコピー。旅先で慌てないために、出発前にひととおり確かめておきたいことをまとめました。
公開日: 2026年11月8日
旅の計画を立てるとき、行き先や宿、お土産のことばかりに気を取られがちですが、お年を重ねてからの旅で本当に大切なのは、実は「お薬と健康のしたく」なのかもしれません。旅先で体調を崩した時、いつものお薬がない、保険証のコピーが手元にない、近くにかかりつけの先生もいない――そんな状況になると、せっかくの楽しい旅が一気に大変なものになってしまいます。きょうは、旅に出る前に、ぜひ整えておきたい「お薬と健康のしたく」のお話をいたします。少しのひと手間で、旅の安心がぐっと深まります。慌てず、ゆったりとした旅を楽しむための、いちばんの土台です。
いつものお薬、旅日数+二日分を
毎日お飲みになっているお薬がある方は、まず、旅日数より少し多めにお薬を準備しておくのが鉄則です。たとえば、二泊三日の旅なら五日分、三泊四日の旅なら六日分――というふうに、旅の日数に「二日分の予備」を足しておきます。これは、万一旅先で帰りが遅れた時(電車の遅延や、急な体調不良など)に、お薬を切らさないための安全策です。
お薬は、できれば「いつもの一日分のお薬ケース」に小分けにしておくか、薬剤師さんに頼んで一回分ずつ袋に分けてもらっておくと、旅先でも飲み間違いがありません。最近では、ピルケース(週ごとの曜日に分けて入れられる小さなケース)が、薬局や百円ショップで手に入りますから、ひとつ持っておかれると、長く便利にお使いいただけます。
お薬と一緒に、「お薬手帳」も必ず携帯してください。これは、ふだんから定期的に医療機関にかかっていらっしゃるかたなら、お持ちのはずです。お薬手帳には、いまお飲みのお薬の名前、量、飲み方が、ぜんぶ記録されていますから、旅先で急に体調を崩して別の病院を受診することになっても、その先生にお見せすれば、安心して診察を受けられます。原本でも、コピーでもかまいません。お薬手帳を持っていらっしゃらない方は、薬局でいまお飲みのお薬の一覧を出してもらえますので、それを一枚もらっておくとよいでしょう。
旅の備え、確かめておきたい七つの項目
お薬以外にも、お年を重ねてからの旅では、忘れずに整えておきたい健康関連のしたくがいくつかあります。旅行カバンに入れる前に、ぜひひととおりチェックしてみてください。
- ふだんのお薬(旅日数+二日分)とお薬手帳
- 予備の眼鏡(老眼鏡もお忘れなく)
- 補聴器の予備電池
- 保険証のコピー(原本は紛失リスクが高いため)
- 救急用品――絆創膏、消毒液、頭痛薬、胃薬、酔い止め
- 緊急連絡先のメモ(ご家族、かかりつけ医、訪問先のホテルなど)
- 持病があれば、その内容を書いた紙(英語も併記すると海外旅行で便利)
予備の眼鏡は、見落としがちですが、お年を重ねてからの旅で意外と重要な品物のひとつです。とくに、旅先で本を読んだり地図を見たりするための老眼鏡を忘れると、せっかくの旅の楽しみが半減してしまいます。一本目を旅行中になくしてしまっても、二本目があれば慌てずに済む――そんな安心が、旅をのびのびとさせてくれます。
補聴器をお使いの方は、予備の電池をぜひお持ちください。旅先のお店で同じ規格のボタン電池が見つからずに、聞こえの悪い状態で旅を続けることになると、お疲れも倍増します。元の箱から二、三個取り出して、ジッパー付きの袋に入れて、お財布の中にしまっておかれるとよいでしょう。
保険証は、原本を持って行くのが基本ですが、お一人旅や長い旅の場合は、紛失が心配です。コピーを取っておき、原本は宿の金庫に預けて、コピーをお財布に入れて持ち歩く――そんな工夫もおすすめです。原本がなくても、コピーがあれば医療機関での受診はおおむね可能ですし、後日清算という方法もあります。
旅先での体調管理、いつもより慎重に
旅は楽しいものですが、ふだんの暮らしとはちがう環境ですから、お体への負担も、思っているより大きいものです。気温の変化、湿度の違い、慣れない食事、移動の疲れ、布団や枕の違い――どれもが少しずつ積み重なって、旅の二日目、三日目に「体がだるくなってきた」「お腹の調子が変だ」となることがあります。
旅先で気をつけたいいちばんのポイントは、「水分補給」と「睡眠」です。お水を、ふだんよりもこまめにとる。夜は、たとえお酒の席が楽しくても、ふだんの就寝時間からあまりずれないように努める。これだけで、旅の疲れがぐっと軽くなります。新幹線や飛行機の移動中も、ペットボトルのお水を一本持って、こまめに口をしめらせるとよいでしょう。
また、無理をしないこと――これも何度もお伝えしたい大切なことです。「せっかく来たんだから」と頑張りすぎる気持ちは、誰にでもあるものですが、お年を重ねた体には、その「頑張り」が後でずっしり響いてくることが、よくあります。一日のあいだに、必ずどこかで一時間ほどお休みする時間を作る。観光地を一つ見たら、ベンチに座って三十分のお茶休憩。お腹の調子が今ひとつなら、一食分は軽くおかゆとお茶だけにする――そんな柔らかさが、旅を最後まで楽しむ秘訣です。
万一に備える、家族への連絡網
最後に、お一人旅やご夫婦だけの旅の場合は、ご家族や信頼できる方への「連絡網」を、出発前に整えておかれることをおすすめいたします。これは、旅をネガティブに考えるためではなく、何かあった時のための安心装置として、ご自分のためにもご家族のためにも、たいへん役に立つ備えです。
具体的には、出発前にご家族(お子さんやお孫さん、ご兄弟など)に、こんな情報を伝えておきます。「○月○日から○月○日まで、○○県に旅行に行きます」「泊まる宿は、○○ホテル、電話は○○-○○○○-○○○○」「行きの新幹線は、○月○日の○時発の○号」「帰りは、○月○日の○時に自宅に戻る予定」――この程度でかまいません。短いメモにして、お子さんにLINEで送るか、紙に書いてお渡しするだけで、いざという時の連絡がスムーズになります。
また、旅の途中で、一日に一度くらい、ご家族にLINEや電話で「今日も元気よ」「明日はこちらに移動するわね」とひと言伝えておかれると、ご家族もとても安心されます。お一人旅は自由でよいものですが、ご家族にとっては「無事に過ごしているかしら」と心のどこかで気にかかっているものです。短いひと言だけでも、その心配を取り除いてあげる――それは、お互いの旅を、よりよいものにしてくれます。
旅の前のしたくは、行き先や宿だけでなく、お薬と健康の準備こそが、いちばん大切な土台です。万全に整えていれば、たとえ旅先でちょっとした体調の崩れがあっても、慌てずに対処できますし、何より「もしもの時の備えがある」という安心感が、旅そのものを伸びやかに楽しませてくれます。お年を重ねてからの旅は、長い人生のごほうびのような時間。だからこそ、しっかりと健康のしたくを整えて、思いきり楽しんでこられることを、心から願っております。出発の前日には、お薬、お薬手帳、保険証のコピー、眼鏡、補聴器の電池――そのひとつひとつを、お茶を飲みながらゆっくりと確認する時間をとってみてください。「ちゃんと準備した」という安心が、旅の最初の一歩を、いっそうきもちよく踏み出させてくれます。よい旅を、ごゆっくりお楽しみくださいね。きっと、家に帰って荷物をほどく時、無事に旅を終えられたことへの深い感謝が、しずかにこみあげてくることでしょう。それも、旅という時間が、私たちに贈ってくれる、もっとも温かい贈り物のひとつなのです。