暑中見舞いの心づかい
はがき一枚で気持ちを届ける暑中見舞い。書く時期や、ひとことそえたい言葉をやさしくまとめました。
公開日: 2026年7月4日
夏の便りといえば、暑中見舞い。年賀状ほど身がまえなくても、ふっと顔が浮かんだ方に「お元気ですか」と一筆お送りできるのが、このはがきのよいところです。最近はメールやLINEでひと言済ませてしまう方も増えましたが、ポストに届いた手書きのはがきには、画面では伝わらないぬくもりが宿ります。今日は、暑中見舞いを書く時期と、添えたい一言のお話をしてみますね。
いつ出すのがいいの?――梅雨明けから立秋まで
暑中見舞いを出す時期には、ゆるやかな決まりごとがあります。「梅雨があけたころから、立秋の前日まで」――これがおおむねの目安です。年によって梅雨明けは前後しますが、おおよそ七月の中ごろから八月七日(立秋の前日)あたりまで、と覚えておけば間違いありません。
立秋(およそ八月七日)を過ぎてからは「残暑見舞い」と呼び方が変わります。残暑見舞いは八月末ごろまでに届くようにお出しすればよいので、書きそびれてしまった場合でも、慌てる必要はありません。「立秋を境に呼び名が変わるだけ」と気軽に考えてみてください。
では、お相手はどんな方に出すのがよいでしょうか。
- ご無沙汰している友人やご親戚
- お世話になっている先生やお医者さま
- 病気療養中の方への、お見舞いの一言として
- 暑い土地に暮らすご家族への、安否うかがい
- 年賀状をくださった方への、夏のごあいさつ
暑中見舞いは、年賀状ほどしかつめらしくないので、お返事がなくても気になさらず、思いついたときにすっと出せるのが魅力です。
書き出しと、ひとこと添える季語のうれしさ
暑中見舞いの書き出しは、「暑中お見舞い申し上げます」とまず大きめに書きます。続いて、相手のことを気づかう一文、自分の近況を一文、そして締めくくり。これくらいの構成でじゅうぶんです。短くても、相手のお顔を思い浮かべて書いた一筆は、ちゃんと伝わります。
ひと言そえる夏の言葉に、季語をすこし混ぜると、ぐっと趣が深まります。たとえば、「蝉時雨が日ごとに賑やかになってまいりました」「向日葵が空に向かって背を伸ばしております」「夕立のあと、ひんやりした風が心地よくなりました」――そんな一文を一つ入れるだけで、文字のあいだから夏の景色が立ちのぼってきます。
ぴったりの言葉に迷われたら、こんな表現をご参考になさってください。
- 蝉時雨が連日にぎやかでございます
- 炎暑の候、いかがお過ごしでいらっしゃいますか
- 夕立のあとの涼風が、ありがたく感じる季節となりました
- 向日葵が空を見上げる季節となりました
- 夏休みは、お孫さんとお過ごしでしょうか
はがきの選び方、ほんの少しの心づかい
暑中見舞い用のはがきには、いろいろな種類があります。郵便局では「かもめ〜る」と呼ばれる、くじ付きの暑中見舞いはがきが季節限定で販売されることもあります。また、雑貨店や文房具店で、絵柄入りの私製はがきを選ぶ楽しみもあります。朝顔、向日葵、金魚、すいか、風鈴、波がしら――どれも見ているだけで涼やかな気持ちになるものばかりです。
お相手のお好みやお人柄に合わせて、はがきを選ぶ時間もまた、夏の小さな楽しみのひとつ。療養中の方には、明るい黄色の向日葵を。お子さんを亡くされたばかりの方には、しっとりとした淡い色合いを。書く前の「えらぶ」段階から、心づかいは始まっています。
宛て名や日付の書き方は、年賀状とほぼ同じです。ただ、最後の日付は「令和○年 盛夏」「○○年 七月吉日」と書くと、季節感が出てより夏らしくなります。「盛夏」はおよそ立秋まで使える便利な言葉です。
ご家族や親しい方とお過ごしになることが多くなった現在の暮らしのなかでは、年に一度の暑中見舞いが、ご無沙汰している方とのご縁を保つ大切な糸になってくれることもあります。お返事の有無にこだわらず、ご自分のペースで、一年に一通でも書いてみる――その積み重ねが、十年、二十年と振り返ったときに、ふしぎな絆を結んでくれているはずです。お顔を合わせる機会は減っても、はがき一枚に宿る筆の力で、お互いの息づかいを確かめあえる――そんなふしぎな魔法が、便りには宿っています。
お孫さんとご一緒に書く、というのも楽しいものです。お孫さんが絵を描き、おじいさん・おばあさんが文字を書く――そんな共作のはがきが届いたら、受け取った方の顔がほころぶ姿が、目に浮かぶようです。一人ではなかなか筆が進まないときも、ご家族とご一緒なら、お盆の前のひと仕事として、楽しく取り組めるのではないでしょうか。
便利な世のなかになって、つい郵便ポストから足が遠のいてしまうものですが、夏に一度だけ、はがきを書く時間をとってみませんか。書いている自分も、受け取った相手も、ふっと心がほどけるような――そんな静かなひとときが、きっと夏の思い出のひとつになるはずです。湯あがりに浴衣で麦茶を飲みながら、お好きな音楽でもかけて、ゆっくりと一枚一枚したためていく――それだけで、夏の夕暮れが特別な時間に変わっていきます。