思春期のお孫さん、口を出さずに見守る
急によそよそしくなった、と感じる時期があります。けれど、それは成長のしるし。さみしさを引き受けつつ、見守りに徹する時間のお話です。
公開日: 2026年9月7日
「あんなに可愛がってくれたのに、最近めっきり口数が減ってしまった」「会いに行っても、自分の部屋からなかなか出てこない」――そんなお孫さんの変化に、ちょっと寂しさを感じていらっしゃるおじいちゃん、おばあちゃんは多いのではないでしょうか。中学生から高校生のころ、いわゆる思春期に入ったお孫さんは、急によそよそしくなったり、口がきけなくなったりすることがあります。今日は、思春期のお孫さんとの距離の取り方について、ゆっくりお話ししてみたいと思います。
よそよそしさは、成長のしるし
あの可愛らしかったお孫さんが、急に話しかけても返事をしてくれなくなった――それは、決してあなたが嫌われたわけではありません。思春期というのは、自分の心と体が一気に変わっていく、人生のなかでもとくに激しい時期です。「自分は何者なのか」「親や大人とは違う、自分の世界を持ちたい」――そんな思いが、心の中で渦巻いている時期なのです。
だからこそ、家族との距離も、子ども時代とは違ってきます。「もう子どもじゃない」というアピールが、よそよそしさや反抗的な態度として現れる――これは、人間の発達のなかでとても自然なことなのだそうです。むしろ、こうした変化がきちんと起こることが、子どもから大人へと成長していくプロセスの大事な一歩。「うちのおじいちゃん、おばあちゃんが嫌いになったんじゃない」――そう思って、寂しさをぐっと飲み込みつつ、見守ってあげるのが、思春期のお孫さんとのちょうどよい距離なのです。
思春期のお孫さんと接するとき、心がけたいことをまとめました。
- お孫さんから話してくれるのを待つ、あれこれ聞かない
- 「最近、勉強どう?」など、答えにくい質問は避ける
- 話してくれた時は、評価せずに、ただ「うんうん」と聞く
- 目を見て話さない、何かしながらの方が話しやすいことが多い
- 「久しぶり」「元気そうね」だけで十分なあいさつになる
「最近どう?」と聞かないやさしさ
思春期のお孫さんと話す時に、つい言いそうになるのが「最近、学校どう?」「勉強がんばってる?」「友達できた?」というような質問です。心配して聞きたい気持ちは、よくわかります。けれど、こうした質問は、思春期のお孫さんにとっては答えにくいものなのです。「どう」と聞かれても、「別に普通」「うん、まあ」としか答えられない。質問するほうも、答える方も、お互いに気まずくなってしまうことがあります。
そんな時のコツは、「質問せずに、自分の話をする」ということです。「おばあちゃん、今日お庭でね、変わった虫を見つけたのよ」「おじいちゃん、最近、テレビでこんな番組見てるんだ」――自分のことを楽しそうに話すだけで、お孫さんは「ふーん」「そうなんだ」と返してくれることがあります。質問されると重荷に感じる思春期も、ただ話を聞くだけなら、案外、楽しく相手をしてくれるものです。何より、「私のことを根ほり葉ほり聞かないでくれる」という安心感が、信頼関係を深めてくれます。
会いに行くより、待つほうがいい時もある
「ずっと会えていないから、こっちから行ってみようかしら」――そう思われる気持ちも、よくわかります。けれど、思春期のお孫さんに対しては、こちらから訪ねていくよりも、お孫さん側から「行きたい」と思ってくれるのを待つ方が、うまくいくことが多いのです。たとえ会えなくても、ちょっとした手紙や葉書、季節のお菓子を送るくらいの距離感が、ちょうどよかったりします。
ご家族と相談しながら、ご両親(つまり自分の子ども家族)を通して、「いつでも来てね」「お小遣いだけ送ったよ」「あなたの好きなお菓子があったから送ったわよ」――そんなふうに、間接的にあいだに入ってくれる人を経由するのも、思春期との上手な接し方のひとつです。お孫さんが大人になり、心が落ち着いてくる頃になると、「あの頃のおじいちゃん、おばあちゃんって、いつも気にかけてくれてたんだな」と気づいてくれる日が、きっとやってきます。
待っていれば、また話しかけてくれる日が来る
思春期は、長くは続きません。だいたい中学生から高校生の数年間、長くても二十歳前後で落ち着いてきます。それまでの間、お孫さんがよそよそしくても、こちらの愛情は変わらず注ぎ続ければよいのです。お誕生日のおめでとうメッセージ、お正月のお年玉、進学・卒業のお祝い――節目節目に、「ちゃんと気にかけてるよ」というしるしを、さりげなく送り続ける。それで十分なのです。
やがてお孫さんが大学生になり、社会人になる頃には、また自然と話せるようになっていきます。「おじいちゃん、おばあちゃん、最近どうしてる?」と、自分から電話をくれることもあります。その時、「久しぶり」と笑顔で受け止めてあげられる関係を保てていれば、それで万事よし、なのです。「あの時、いっぱい注意してあげればよかった」「もっと厳しくしておけば」――そんな後悔をしないためにも、思春期の間は、見守るほうに徹する。それが、お孫さんとの長い付き合いを大切にする、いちばんの近道です。
もうひとつ大切なのは、ご自分のさみしさを、お孫さんにぶつけないことです。「最近、ちっとも会いに来てくれない」「電話もよこさない」――そんな不満を、お孫さん本人やご両親(子ども家族)に直接訴えてしまうと、かえってお孫さんを追い詰めることになります。さみしさは、ご夫婦のあいだで分かち合う、ご友人と語り合う、あるいは趣味の活動で気を紛らわせる――そんなふうに、自分の中で受け止めていく工夫が必要です。「ひと時のさみしさ」を引き受けつつ、お孫さんが戻ってきてくれる日を、ゆっくり待つ。それが、長く優しい祖父母としての姿なのかもしれません。
自分の思春期を、思い出してみる
思春期のお孫さんに戸惑った時、ぜひ思い出していただきたいのが、ご自分が中学生・高校生だった頃のことです。「あの頃の自分も、親や祖父母に対して、似たような態度を取っていたかもしれない」――そんなふうに、自分の若い頃を振り返ってみると、お孫さんの気持ちが少しずつ見えてきます。あの頃、何を考えていたか、家族のどんな対応が嬉しかったか、どんな対応が嫌だったか。
「干渉されないことが嬉しかった」「黙って見守ってくれる祖父母が、いちばん安心できた」――そんな記憶が、誰しもの胸の中にあるはずです。お孫さんが感じている戸惑いや反抗心は、何十年も前にあなたが感じていたものと、おそらくよく似ています。「私もそうだった」と思えるだけで、お孫さんの態度を、ぐっとあたたかい気持ちで受け止められるようになります。世代を超えて、こうした共通の経験を分かち合えるのが、家族の不思議な縁です。お孫さんがやがて大人になった時、「あの時、口出ししないでくれたおじいちゃん、おばあちゃんに、本当に感謝してる」――そんな日が、必ず来るのです。
見守るというのは、何もしないことではありません。「あなたのことを、いつも気にかけているよ」というしるしを、さりげなく送り続ける。たとえば、お誕生日カードを忘れずに送る、お孫さんの好きなお菓子を季節ごとに送る、節目には小さなお祝いの気持ちを添える――そんな小さな積み重ねが、思春期のお孫さんの心の片隅に、確かに残り続けます。直接の言葉にならなくても、「あなたを大切に思っている」というメッセージは、ちゃんと伝わっていきます。