詐欺の電話、家族の名前が出てきたら
「オレだけど」から始まる電話に、どう備えますか。落ち着いて対応するための、家族との合言葉づくりをご紹介します。
公開日: 2026年6月14日
「もしもし、おばあちゃん?オレだよ、オレ」――そんな電話が、お住まいの地域でもかかってきたという話を、お聞きになったことがあるかもしれません。お孫さんやお子さんの声に似ていると、つい「あら、〇〇かい?」と返してしまう。けれど、その返事こそが、相手の思うつぼなのです。詐欺の電話に、いちばん効くのは、一瞬の判断ではなく、ふだんからの「合言葉」と、落ち着いて切る勇気。今日は、家族の名前が出てきた時の、やさしい備え方をお話しします。
「オレだけど」と聞こえたら、まず名前を聞きかえす
詐欺の電話は、たいてい「オレだけど」「私だけど」と、相手の名前を言わずに始まります。これは、こちらに「〇〇かい?」と名前を口にさせて、その名前で会話を進めるための手口です。ですから、まず大切なのは、こちらから名前を呼ばないこと。「どちら様ですか」「お名前を教えてください」と、はっきり聞き返してください。
本物のお孫さんやお子さんなら、聞き返されても気を悪くしません。「あ、僕だよ、〇〇」と、ちゃんと名乗ってくれます。逆に、ごまかしたり、急に話題を変えたりするようなら、それはおかしいと感じてよい合図です。「風邪をひいて声が変なんだ」と言われても、慌てず、いったん電話を切って、ご家族の本来の番号におかけ直しになるのが安全です。
電話の冒頭で気をつけたい言葉や言い回しを、いくつか挙げておきます。
- 「オレだけど」「私だけど」と名前を言わない
- 「風邪で声が変」「ケガで電話を変えた」と説明
- 「お金が必要」「会社のお金をなくした」と急かす
- 「内緒で」「お父さんには言わないで」と頼む
- 「今すぐ駅で受け取ってほしい」と急ぐ
- 「ATM の操作方法を教えるから」と指示
ひとつでも当てはまる電話なら、その時点で「ふつうの電話ではない」と思って差し支えありません。
家族の合言葉、ひとつ決めておく
詐欺電話への、もうひとつの強い味方が「家族の合言葉」です。ふだんから、お子さんやお孫さんと「もしもの時の合言葉」を一つ決めておく。たとえば、「うちの猫の名前」「子どもの頃に住んでいた町の名前」「亡くなったおじいちゃんが好きだったお酒の名前」――家族にしかわからない、ちょっとした言葉でじゅうぶんです。
電話で「オレ、〇〇だよ」と言ってきたら、「合言葉は?」と一言尋ねる。本物の家族なら、ちゃんと答えられます。答えられなかったら、それは詐欺の電話。落ち着いて電話を切ってください。
合言葉は、お正月やお盆など、家族が集まるタイミングで決めて、年に一度は更新するのがおすすめです。同じ合言葉を何年も使っていると、家族のあいだでも忘れてしまうことがあります。「今年の合言葉は〇〇ね」と毎年確認するだけで、防犯への意識も自然と高まります。
怪しいと感じたら、一度切って、ご自分からかけ直す
それでも電話のなかで「もしかして本物かも」と迷うことはあります。そんな時の合言葉が「いったん切って、ご自分からかけ直す」です。「今、ちょうど鍋を火にかけていて。あとでこちらからかけ直すから、お父さんの携帯にかけるね」と伝えて、すっぱり電話を切ってしまう。
その後、ふだん使っているお子さんやお孫さんの番号に、ご自身から電話をかける。本物なら「あれ、いまさっき電話したのは僕じゃないよ」と、すぐにわかります。本人と話せれば、それで安心です。
もし、ふだんの番号が見つからないとき、お子さんの職場にかけてしまうのを心配されるなら、最寄りの警察署や、警察相談専用ダイヤル「♯9110」に電話してご相談を。「こんな電話があったのですが」と話すだけで、しっかりお話を聞いてもらえます。「迷惑をかけるかしら」と遠慮しなくて大丈夫。たくさんの方が同じように相談されています。
- 「今ちょっと忙しいから、あとで」と一度切る
- ふだん使っている、ご家族の番号にご自分からかけ直す
- 番号がすぐ見つからなければ、警察相談ダイヤル ♯9110
- 急にお金の話が出たら、必ず一度切ってご相談を
- 近くにご家族や信頼できる方がいれば、すぐにご相談を
詐欺の電話は、相手を一人にして、急がせて、判断する時間を奪うのが手口です。だからこそ、ひと呼吸おくこと、誰かに相談することが、いちばんの防御になります。
「オレオレ詐欺」「還付金詐欺」などと呼ばれるこうした電話は、いまも形を変えて続いています。けれど、必要以上に怖がる必要はありません。「家族の合言葉」と「いったん切ってかけ直す」――この二つだけ覚えていれば、たいていの詐欺は防げます。ご家族と一度、お電話の練習をしてみるのもよいかもしれません。「もしもし、オレだけど」と冗談まじりに言い合いながら、お互いの番号を確かめあう。そんな時間が、ふだんは伝えにくい家族の絆を、しずかに深めてくれることもあります。
もし万が一、すでにお金を渡してしまった、振り込んでしまったという場合でも、あきらめずにすぐ警察と銀行にご連絡を。早く動けば、お金が戻ってくることもあります。一人で抱え込まず、ご家族や信頼できる方に「実はこんなことが」と話せる関係を、ふだんから築いておいてください。