「推し」がいる暮らし、年齢は関係ありません
俳優さんでも落語家さんでも、力士でも歌手でも。心を寄せる誰かがいるだけで、毎日に小さなはりが生まれます。
公開日: 2026年8月5日
「推し」という言葉を、お孫さんの口から聞いたことはありませんか。歌手や俳優さんなど、心を寄せて応援している相手のことを、若い人たちはそう呼ぶそうです。アイドルを追いかける女子高生のためだけの言葉のように聞こえるかもしれませんが、実は、年齢を重ねた方々のあいだにも、しずかにこの楽しみは広がっています。若い頃に夢中になった歌手のコンサートに、何十年ぶりに足を運ぶ。テレビで見た落語家さんの寄席を訪ねる。力士の取組を毎日たのしみにする――。心を寄せる誰かがいるだけで、毎日に小さなはりが生まれるものです。今日は、年齢を問わずたのしめる「推し」のいる暮らしのお話です。
「推し」は、生きるはりになります
毎日の暮らしに、小さな楽しみがいくつあるか――この問いは、年齢を重ねるほど大切になってくるように思います。お孫さんに会える日、お友達とランチに行く日、お墓参りの日。予定があると、人は自然と元気になります。「推し」を持つというのは、こうした楽しみを、自分の力で増やせる方法のひとつです。テレビ番組の放送日、コンサートのチケット発売日、新しい本の発売日――手帳に書き込めるたのしみがどんどん増えていきます。
応援している方の活躍を見守ることは、自分の毎日に活気を呼びこむことでもあります。「あの方が頑張っているのだから、私もちょっと頑張ろう」と思える。それは決して、自分にないものを誰かに重ねることではなく、むしろ、自分の生活に小さな目標を見つけるきっかけになるのです。新聞のテレビ欄をめくる時間が楽しくなり、書店や図書館に足を運ぶ口実ができる。日々のちょっとした行動が、推しを通じて広がっていきます。
「推し」の見つけ方、いろいろあります
では、どうやって「推し」を見つければよいのでしょうか。難しく考える必要はありません。テレビを見ていて「あら、この方すてき」と感じた瞬間、それがもう始まりです。落語家さんを応援する方もいらっしゃいますし、歌舞伎役者、能楽師、棋士、力士――選ぶ相手は、本当に自由です。お孫さんに教わって、若い歌手を応援するようになったというおばあさまもいらっしゃいます。年齢も、性別も、好みも、まったく関係ありません。
「推し」がいる暮らしを楽しむための、いくつかの入り口をご紹介します。
- 好きな俳優さんのドラマを録画しておき、夕方の楽しみにする
- 応援する力士の取組を、その日の最後の楽しみにする
- 好きな歌手の昔のレコードや CD を、図書館で借りてみる
- 贔屓の落語家さんがいるなら、寄席にも一度足を運んでみる
- ファンクラブの会報や新聞を、月に一度のお楽しみにする
ひとりの楽しみが、誰かとつながる入り口になる
推しがいる暮らしの、もうひとつのうれしいところは、同じ趣味の方と出会えることです。お孫さんやお子さんと、共通の話題で盛り上がる。書店で同じ本を手に取った方と、ふと言葉を交わす。地域のサークルやファンの集まりに、思いきって顔を出してみる。「同じ方を応援している」というだけで、初対面の方ともすっと話せるのが、推し活の不思議なところです。
ただし、夢中になりすぎるのも考えものです。コンサートのチケットや限定の品物に、お財布を許容範囲を超えて使ってしまうことのないよう、楽しみは「ゆとりのなかで」と決めておきましょう。月に使ってよい予算を、あらかじめ決めておくのもひとつの方法です。推しの方の活躍を見守ることは、お金をかけずとも十分にできる楽しみです。テレビで番組を楽しむ、図書館で本を借りる、無料の配信を聴く――身の丈に合ったかたちで、長く楽しめば、それで十分です。
また、近年では「インスタグランマ」という言葉も生まれているそうです。これは、シニア世代でありながら、ご自身の暮らしや趣味を写真で発信する女性のこと。お孫さんに教わって写真投稿を始めた方が、推しのアイドルや力士の話題を共有するうちに、世界中の同好の方とつながった――そんなお話も少なくありません。SNSは難しいと感じる方は、無理に始める必要はありません。けれども、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞のテレビ欄――これまでの方法でも、推しを楽しむ世界はじゅうぶんに広がります。大切なのは、自分の心がときめく相手に出会うこと。そして、その出会いを「ささやかな楽しみ」として、毎日のなかに大切に育てていくことです。年齢は関係ありません。むしろ、長く生きてきた方ほど、「いいなあ」と心が動く瞬間の貴重さを、よくご存知のはずです。
年齢を重ねるほど、新しい趣味を始めるのに勇気がいるように感じる方もいらっしゃるかもしれません。けれど、推しを持つというのは、ちっとも特別なことではありません。子どもの頃に好きだった歌手、若い頃に夢中になった俳優、テレビでよく見るアナウンサー――もう「推し」は、あなたの暮らしのどこかに、すでにいるのかもしれません。改めて目を向けてみたら、毎日の景色が、ほんの少し、明るく見えてくるかもしれませんよ。「推し」の存在は、日々の小さな灯。今日もどこかで、あなたの応援する誰かが、まっすぐに歩んでいます。