お薬手帳、もしもの時に役立つ一冊
旅先や急な体調不良のとき、お薬手帳が頼りになります。書き方・持ち歩き方のコツをまとめました。
公開日: 2026年6月5日
お薬手帳――一度はお持ちになったことがあるかもしれません。薬局でいただく、あの小さな冊子です。普段はお家のどこかに眠ったまま、という方も多いのではないでしょうか。けれど、このお薬手帳は、もしもの時にあなたとご家族を救ってくれる、たいへん心強い一冊なのです。今日は、お薬手帳との上手なつきあい方を、ゆっくりお話ししてみたいと思います。
お薬手帳が、なぜ大切なのか
お薬手帳の役目は、いま飲んでいるお薬の情報を、一冊にまとめておくことです。お医者さんが新しいお薬を出すとき、副作用を起こさないために、いま飲んでいる他のお薬と組み合わせてよいかを確認します。複数の病院に通っている方ほど、この情報はとても大切になります。
たとえば内科で血圧のお薬、整形外科で腰痛のお薬、眼科で目薬――それぞれの先生は、ほかの先生がどんなお薬を出しているか、原則として知りません。ですから、患者さんご本人が「私はいま、こんなお薬を飲んでいます」と伝える役目を担うのが、お薬手帳なのです。
そして、お薬手帳がとくに役立つ場面は、次のようなときです。
- 旅先で急に体調をくずしたとき
- 災害で避難所暮らしになったとき
- 救急車で運ばれて、ご自身で話せないとき
- 歯医者さんで治療や抜歯をするとき
- 新しい病院・新しい先生にかかるとき
とくに、災害時には、お薬手帳があるかないかで、いただけるお薬の種類や量が変わることもあります。「いつも飲んでいるお薬の名前は?」と聞かれて、ぱっと答えられる方は、なかなかいらっしゃいません。だからこその、一冊なのです。
お薬手帳の上手な書き方・使い方
「お薬手帳は薬局でくれるシールを貼るだけ」――そう思っていらっしゃる方も多いかもしれません。もちろん、それでもじゅうぶん役目を果たしてくれますが、いくつかのひと工夫を加えると、もっと頼れる一冊になります。
まずおすすめなのは、最初のページに、ご自身の名前、生年月日、緊急連絡先(ご家族の電話番号)、かかりつけ医院の名前、アレルギーの有無を、ご自身の字で書き入れておくこと。意識がなくなった時にも、救急隊員の方がすぐに見つけてくれます。
また、市販のお薬や、サプリメント、漢方薬を飲んでいる方は、それらも併せて書いておくのが安心です。「ビタミン剤くらい大丈夫」と思いがちですが、お薬の組み合わせで思わぬ副作用が出ることもあります。「ロキソニンを月に何回飲む」「青汁を毎朝一杯」など、具体的に書いておきましょう。
ご自身で書き加えると便利な情報を、いくつか挙げてみます。
- 氏名、生年月日、血液型
- ご家族の名前と連絡先(できれば二人分)
- かかりつけ医院の名前と電話番号
- 持病(高血圧、糖尿病、心臓病など)
- アレルギー(食品・薬・金属など)
- 市販薬やサプリメントの名前と量
鉛筆ではなく、ボールペンで書くこと。雨や汗で滲まないように、ビニールカバーを掛けておくのもおすすめです。
いつも持ち歩く、その心がけ
お薬手帳の真価は、「持ち歩いていてこそ」発揮されます。お家に置いておいたままでは、もしもの時に役に立ちません。バッグのなかや、お財布の近くに、いつも入れておく――それが、いちばん大切な心がけです。
「重いし、毎日は持ち歩けない」という方には、コンパクトな手帳タイプの保険証ケースがおすすめです。健康保険証、診察券、お薬手帳をまとめて入れられるケースが、薬局や百円ショップでも売られています。お財布と一緒に持ち歩けば、忘れることもありません。
最近では、スマホでお薬の情報を管理できるアプリもあります。ご家族と一緒に試してみるのもいいかもしれません。ただし、災害時には電池切れの心配もありますから、紙の手帳と併用するのがいちばん安心です。
お薬手帳は、ご自身の体のことを、いつでも誰かに伝えられる「お守り」のようなものです。年を重ねると、お薬の数が増えたり、変わったりすることが多くなります。そのつど薬局でシールを貼ってもらい、ご自身でひとこと書き加える。たったそれだけのひと手間が、もしものときの安心につながります。お孫さんやお子さんが遊びにいらっしゃるときに、「これがおばあちゃんのお薬手帳よ」と見せておくのもよいですね。お互いに、何かあったときの連絡や対応が、ぐっとスムーズになります。今日からでも、引き出しのなかのお薬手帳をひらいて、最初のページに、ご自身のお名前を書き加えてみてはいかがでしょうか。それだけで、その一冊が、あなただけの頼れるお守りに育っていきます。
もしお薬手帳をなくしてしまったり、複数の薬局でばらばらに発行されてしまっている方は、薬局にお願いして、一冊にまとめなおしてもらうこともできます。「最近、お薬の数が増えてしまって…」と気軽にご相談ください。薬剤師さんは、こうしたまとめなおしの作業に慣れていらっしゃいます。お薬手帳が一冊にまとまっているだけで、お医者さんも判断しやすくなり、ご自身の安全も守られます。
そして、ご家族との「もしも」の話のなかでも、お薬手帳の保管場所を伝えておくことを忘れずに。「お薬手帳は、いつも台所のこの引き出しに入れてあるよ」――そんなひと言を、お子さんやご近所の信頼できる方に伝えておくだけで、急な体調不良のときに、家族や周りの方が動きやすくなります。