後期高齢者医療制度、知っておきたい入り口
七十五歳になると医療保険のしくみが変わります。むずかしく感じる制度ですが、まずは保険証の見方と窓口を確認しておくと安心。詳しくはお住まいの自治体へ。
公開日: 2026年10月3日
七十五歳のお誕生日を迎えると、医療保険のしくみが大きく変わります。それまで使っていた国民健康保険や、お勤め先の健康保険から、「後期高齢者医療制度」と呼ばれる別の制度に移ることになるのです。突然新しい保険証が送られてきて、「これって、いったいどういうこと?」と戸惑われる方も少なくありません。仕組みのお話を一からするとむずかしく感じますが、私たちが知っておきたいのは、ごく入り口のところだけで十分です。詳しいことは、お住まいの自治体の窓口や、地域包括支援センターの方々が丁寧に教えてくださいます。今日は、後期高齢者医療制度がどんなしくみで、何を確認しておけば安心できるか、その「最初の一歩」をやさしくご紹介します。なお、本記事は一般的な目安をお伝えするものです。個別のお手続きについては、必ずお住まいの自治体や専門の窓口でご確認ください。
後期高齢者医療制度とは、どんなしくみ?
後期高齢者医療制度は、七十五歳以上の方々(一部、六十五歳から七十四歳で一定の障害のある方も含む)を対象とした、独立した医療保険制度です。平成二十年(二〇〇八年)に始まったこの制度は、それまでの老人保健制度を再編し、より安定した医療を提供することを目的としてつくられました。運営しているのは、各都道府県ごとの「後期高齢者医療広域連合」と呼ばれる組織で、市区町村と協力して、保険証の発行や保険料の徴収を行っています。
七十五歳になる月の前月ごろ、お住まいの市区町村から、新しい保険証が郵送で届きます。それまで使っていた国民健康保険証や、お勤め先の健康保険証は、有効期限が切れて使えなくなります。新しい保険証は「後期高齢者医療被保険者証」という名前のものです。これが届いたら、まずはご自身のお名前、ご住所、生年月日、被保険者番号、有効期限などが正しく記載されているかを確認してください。間違いがあれば、すぐにお住まいの市区町村の窓口に連絡を入れます。
七十五歳のお誕生日前後で確認しておきたいことをまとめました。
- 新しい保険証が、お誕生日の前月ごろに届く
- それまでの保険証は、有効期限切れで使えなくなる
- 古い保険証は、自治体の指示に従って処分または返却
- 病院にかかる時は、必ず新しい保険証を持参する
- 限度額適用認定証もあわせて確認しておく
- お薬手帳に、保険証の変更日をメモしておく
自己負担の割合と、高額療養費制度
後期高齢者医療制度に移ると、病院での自己負担割合も変わってきます。一般的には、医療費の一割が自己負担となりますが、現役並みの所得がある方は二割または三割になります。所得によって異なるため、ご自分がどの区分にあたるかは、保険証の表面に記載されている自己負担割合を確認してください。お住まいの自治体から送られてくる説明書類にも、詳しい内訳が書かれていることが多いです。
また、医療費が高額になる場合に備えて、「高額療養費制度」というしくみがあります。これは、ひと月にかかった医療費の自己負担額が、決められた上限を超えた場合に、超えた分が払い戻されるしくみです。入院や手術で大きな費用がかかった月でも、この制度を使えば、家計への負担をぐっと軽くできます。事前に「限度額適用認定証」を発行してもらっておくと、病院の窓口で支払う金額そのものを、上限額までに抑えることができて便利です。
限度額適用認定証は、お住まいの市区町村の後期高齢者医療を担当する窓口で申請できます。所得区分によって上限額が変わるため、申請の際にはご自身の所得が分かる書類を持参するとスムーズです。一度発行してもらえば、有効期限まで何度でも使えます。「もしものとき」のために、元気なうちから準備しておくと安心です。
保険料の納め方、ご家族と話しておきたいこと
後期高齢者医療制度の保険料は、原則として年金から天引きされます(これを「特別徴収」といいます)。年金が年額十八万円以上ある方の多くは、自動的に年金から差し引かれるため、ご自分で支払う手続きは必要ありません。「気がついたら保険料が引かれていた」と感じる方が多いのは、このためです。詳しい金額は、年に一度、お住まいの市区町村から送られてくる「保険料額決定通知書」で確認できます。
年金額が十八万円未満の方や、何らかの理由で天引きされない方は、口座振替や納付書での「普通徴収」となります。納め忘れがないように、口座振替を利用される方が多いです。納付書での支払いを選ばれた場合は、コンビニや銀行で期限内にお納めいただく必要があります。納付書が届いたら、すぐに分かるところに保管しておく習慣をつけると安心です。
保険料の金額や納め方は、お住まいの自治体の窓口で詳しく説明していただけます。ご家族にも保険料の金額や、保険証の保管場所をお伝えしておくと、もしものときに慌てずに済みます。「もしも私に何かあったとき、保険証はここの引き出しに入っているからね」――そんなひと言を、元気なうちから家族に伝えておくこと。それも、これからの暮らしを安心して過ごすための、小さな備えのひとつです。
わからないときは、自治体の窓口へ
後期高齢者医療制度は、制度の名前を聞いただけで「むずかしそう」と感じてしまうかもしれません。けれど、私たちが知っておきたいのは、保険証が変わる、自己負担割合が変わる、保険料が年金から引かれる――この三つくらいで、最初は十分です。あとは、わからないことが出てきたら、その都度、窓口に相談すればよいのです。
ご相談先は、まずお住まいの市区町村の「後期高齢者医療担当窓口」(名称は自治体によって異なります)。ここでは、保険証の再発行、限度額適用認定証の申請、保険料に関する問い合わせ、医療費の還付申請など、ほぼすべてのお手続きができます。窓口の電話番号は、保険証と一緒に送られてくる説明書類や、市区町村のホームページ、市報・広報誌などに記載されています。冷蔵庫の扉や、電話の横に貼っておくと、いざというときにすぐ連絡できて便利です。
また、もうひとつ頼りになるのが、地域包括支援センターです。ここは、高齢の方の暮らし全般について相談に乗ってくれる、お住まいの地域の総合窓口。医療保険のこと、介護のこと、暮らしの困りごと――何でも、まずはここに電話をしてみると、適切な窓口を案内してくださいます。電話一本、無料です。お一人で抱え込まず、頼れる場所を知っておくこと――それが、これからの暮らしを支えてくれる、いちばんの安心です。後期高齢者医療制度は、私たち一人ひとりの暮らしと健康を支えるためのしくみです。むずかしく感じても、入り口だけ知っておけば、あとは窓口に頼ればよい――そんなおおらかな気持ちで、新しい制度と少しずつなじんでいけたらと思います。長く生きてきたご自分の体を、これからも丁寧にいたわっていく――そのための一歩として、まずは保険証の名前と窓口の電話番号を、ご家族と一緒に確認してみてはいかがでしょうか。窓口の方々は、お一人おひとりの状況に合わせて、丁寧に説明してくださいます。「むずかしくて自分には無理」とおっしゃる前に、まずはお電話一本かけてみる――そのちょっとした一歩が、これからの暮らしの安心の入り口になります。制度のしくみは時とともに少しずつ変わっていくこともありますから、年に一度ほど、お住まいの市区町村から届く案内に目を通しておくと、安心のための情報がぐっと身近になります。