医療費控除、家族の分もまとめて
一年間の医療費が一定額を超えると、税金が戻ってくることがあります。領収書のまとめ方や、家族の分の合算について、一般的な目安をやさしくご紹介します。
公開日: 2026年9月23日
病院にかかる機会が増えると、いつの間にか医療費がかさんでいるものです。一年を通じてみると、思ったよりも大きな金額になっていて驚くこともあります。けれど、ご存じでしょうか。一年間に支払った医療費が一定の額を超えると、確定申告をすることで税金の一部が戻ってくる制度があります。それが「医療費控除」と呼ばれるしくみです。少しむずかしそうに聞こえるかもしれませんが、コツをつかめば、家計の助けにもなり、節税にもつながる、知っておいて損のない制度です。今日は、医療費控除の入り口をやさしくご紹介します。詳しい計算や個別のお手続きについては、お住まいの地域の税務署や、税理士さんに相談されることをおすすめします。一般的な目安として、参考にしていただけたらと思います。
医療費控除、どんな制度?
医療費控除とは、一年間(一月一日から十二月三十一日まで)に、ご自身と生計を一にするご家族のために支払った医療費の合計が、一定の額を超えた場合に、超えた部分について所得から差し引いて税金を計算しなおせる制度です。「生計を一にする」というのは、生活費を一緒にしている家族のことで、必ずしも同居している必要はありません。たとえば、別居しているお子さまでも、毎月の仕送りをしているなど、家計が一緒であれば対象になる場合があります。
控除の対象になる金額の目安は、「一年間の医療費の合計から、保険などで補てんされる金額を差し引き、さらに十万円(または所得の五パーセントのうち少ない方)を引いた金額」です。たとえば、ご家族全員の医療費の合計が二十万円だった場合、保険で補てんされた金額がなければ、二十万円から十万円を引いた十万円が控除の対象になるイメージです。これに所得税率をかけたお金が、税金として戻ってくる、というしくみになります。
医療費控除の対象になるものを、いくつかご紹介します。
- 病院・診療所での診療・治療費
- 処方された薬の代金
- 通院のためにかかった交通費(公共交通機関の運賃)
- 入院時の部屋代・食事代(差額ベッド代を除く)
- 歯の治療費(保険適用外の自由診療も一部対象)
- 介護保険サービスの利用料(一部)
- 市販薬の購入費(治療を目的とした場合)
- 妊娠・出産にかかる費用
領収書をまとめる、一年を通じての小さな習慣
医療費控除の確定申告には、一年間の医療費の領収書をまとめて整理しておくことが大切です。一気にまとめるのは大変ですから、月ごと、もしくは病院ごとに分けてファイルやお薬手帳とは別の封筒などに保管していく――そんな小さな習慣を、一年の始まりから少しずつ続けるのがコツです。最近では、確定申告書を作成する際には、領収書そのものではなく「医療費控除の明細書」を提出することになっています。とはいえ、領収書は五年間保管しておく必要がありますので、捨ててしまわず、まとめて取っておいてください。
また、健康保険組合や協会けんぽ、市町村の国民健康保険などから、年に一度「医療費のお知らせ」が届くことがあります。このお知らせには、その年に保険を使って受診した医療費が一覧で記載されており、医療費控除の明細書の代わりとして使うことができます。お手元に届きましたら、捨てずに大切に保管してください。これがあれば、領収書を一枚一枚集計する手間がぐっと減って、確定申告のお手続きが楽になります。
そして大切なのが、ご家族の分もまとめて合算できるという点です。ご夫婦の医療費、お子さまの医療費、生計が一緒であれば別居されているご親族の医療費まで――すべて合計することができます。家族のなかで、いちばん所得の高い方が確定申告すると、戻ってくる税金が多くなる可能性もあります。詳しくは税理士さんや税務署で確認されると安心です。一年に一度の手続きですが、ご家族で「今年の医療費はこれくらいだったね」と確かめあう時間も、家計のふり返りとして大切なひとときになります。
セルフメディケーション税制、もうひとつの選択肢
医療費控除のほかに、もう一つご紹介しておきたいのが「セルフメディケーション税制」です。これは、健康診断や予防接種など、健康増進や疾病予防のための取り組みをしている方が、対象となる市販薬を年間一万二千円以上購入した場合に、その超えた部分について控除を受けられるしくみです。たとえば、対象になる市販薬を年間二万円購入していたら、二万円から一万二千円を引いた八千円分が控除の対象になります。
対象になるのは、「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる、お医者さんの処方箋がなくても買える市販薬の一部です。薬局やドラッグストアで購入したレシートに、対象品目であることが分かるマークが印字されていることが多いです。風邪薬、胃腸薬、湿布薬などが対象になっている場合があります。ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか選べません。年末に「今年はどちらを使う方が得かしら」と比べてみるのも、家計を見直すひとつのきっかけになります。
詳しくは、お住まいの地域の税務署や、税理士さんにご相談ください。最近では、税務署で「医療費控除の相談コーナー」を設けている期間もあります。確定申告の時期(二月から三月)には、特に窓口が混み合いますので、できれば早めに相談に行かれるか、e-Tax を使ったオンラインでの申告も検討されると、ご自宅にいながら手続きを進められて便利です。お孫さんやお子さん家族が e-Tax の操作にくわしい場合、一緒に手伝ってもらうのもおすすめです。
確定申告は一年を通じての小さなふり返り
医療費控除は、毎年の確定申告の時期にあわてて領収書をかき集めるのではなく、一年を通じてコツコツとまとめていく――そんな小さな習慣を持つだけで、ぐっと負担が軽くなる手続きです。さらに、一年間の医療費を眺めてみると、ご自身やご家族の健康の傾向が見えてきます。「今年は風邪を引きやすかったわね」「歯の治療にかなりかかったから、来年は予防に力を入れよう」――そんなふり返りが、来年の暮らしの整え方にもつながります。
また、確定申告を機に、ご家族で「家計のこと」を話し合う時間を持つのも、いいかもしれません。誰がどれくらい医療費を使ったか、保険はどう活用したか、来年に備えてどんな準備をしておくか――そんな会話のなかから、お互いの体調を気遣う気持ちも自然と生まれてきます。年金生活でも、医療費控除をうまく活用すれば、戻ってくる税金がちょっとした旅費にも、お孫さんへのお小遣いにもなります。「面倒だから」と思わず、まずはご家族のなかでいちばん詳しそうな方に一度、相談してみる――そこから始めてみてはいかがでしょうか。むずかしいことは専門家にまかせ、ご自分は領収書をまとめる――そんなふうに役割を分けるだけで、ぐっと取り組みやすくなります。一年の終わりに「今年もちゃんとまとめておけたな」と感じられる、小さな達成感も生まれます。制度は、知っていれば味方になり、知らなければ素通りしてしまうものです。長く生きてきたご褒美のように、こうしたしくみを上手に使っていく姿勢を、これからも大切にしていきたいものです。一年に一度の確定申告が、ご自分とご家族の健康と暮らしを見つめ直す、しずかなふり返りの時間になりますように。むずかしいと感じたら、お住まいの地域の税理士さんや、税務署の相談窓口を頼ってみてください。詳しいことは専門家に任せ、ご自分は領収書を整える――それで十分です。