学童期のお孫さん、聞き役にまわる
学校のこと、友だちのこと――話してくれるだけでうれしいものです。アドバイスより、まずは「うんうん」と聞く時間が、心の距離を縮めます。
公開日: 2026年8月28日
ランドセルを背負い、小さな足で学校に通うお孫さんの姿が、目に浮かぶでしょうか。学童期――小学生になったお孫さんは、毎日の学校生活のなかで、たくさんのことを経験し、たくさんのことを感じています。お友達のこと、先生のこと、勉強のこと、お休み時間のこと。一日のなかで起こったあれこれを、おじいちゃんおばあちゃんに「ねぇねぇ、聞いて!」と話してくれる――それは、何にも代えがたい嬉しい時間です。今日は、そんな学童期のお孫さんとの関わり方の、ちょうどよい距離感のお話をお届けします。
「聞いてもらえる」が、いちばんの安心
学童期のお孫さんにとって、おじいちゃんおばあちゃんの存在は、お父さんお母さんとはまた違った、特別な意味を持っています。親には言いにくい本音、ちょっと自慢したい出来事、誰かに聞いてほしい愚痴――そんなものを、お孫さんはふと、おじいちゃんおばあちゃんに打ち明けてくれることがあります。それは、「ここでは何を話しても受け止めてもらえる」という、深い安心感があるから。何かをしてもらうよりも、ただ「うんうん」と聞いてもらえる時間が、お孫さんにとっては何よりのお守りになります。
話を聞く時にいちばん大切なのは、途中で口を挟まないこと。お孫さんが学校での出来事を話してくれている最中に、「それはあなたが悪いんじゃないの?」「そういう時はね、こう言うのよ」と、ついつい大人としての助言を入れたくなる気持ちはよく分かります。けれど、そこをぐっと飲み込んで、まずは話を最後まで聞いてあげてください。話を聞いてもらえたという満足感が、子どもの心を癒やし、自分で考える力を育てていきます。
学童期のお孫さんの話を聞く時に、心がけたい五つのことをまとめました。
- 話の途中で口を挟まず、最後まで聞く
- 「それはどうだった?」と気持ちを尋ねる
- アドバイスは求められた時にだけ、短く伝える
- 「すごいね」「よくがんばったね」と素直に認める
- 「お父さんお母さんには内緒ね」を約束した時は、必ず守る
「うんうん」と「すごいね」の魔法
子どもの話を聞く時の魔法の言葉は、「うんうん」と「すごいね」だと言われます。話の合間に「うんうん」と相づちを打つだけで、お孫さんは「ちゃんと聞いてくれている」と感じます。話の終わりに「すごいね、よくがんばったね」と素直に認めてあげると、お孫さんの胸は誇らしさで満たされます。むずかしい言葉も、立派な助言もいりません。たった二つの短い言葉が、お孫さんの心を温かく包んでくれます。
学校でいやなことがあった日のお話を聞く時は、特に「うんうん」が大切です。「お友達にこんなことを言われて悲しかったの」と話してくれた時、すぐに「そんなの気にしなくていいのよ」と言ってしまうと、お孫さんは「やっぱり分かってもらえない」と感じてしまうかもしれません。「そっか、それは悲しかったね」「うんうん、おばあちゃんも悲しい気持ちになるわ」――そう寄り添うだけで、お孫さんの心の重みは、ふっと軽くなります。気持ちを否定せず、まず受け止める。それが、聞き役としていちばん大切な姿勢です。
親とは違う、ちょっと斜めの立場で
おじいちゃんおばあちゃんの良さは、親とは違う「ちょっと斜めの位置」から、お孫さんを見守れることにあります。お父さんお母さんは、毎日の生活のなかでお孫さんにあれこれ言わなければならない立場。宿題、お風呂、寝る時間――子どもにとっては、口うるさく感じる場面も多いはずです。おじいちゃんおばあちゃんは、そうした日常から少し離れた場所にいるからこそ、お孫さんの心の逃げ場、安心の場所になれるのです。
とはいえ、親の方針を無視して甘やかしすぎるのは禁物です。お父さんお母さんが「お菓子は一日ひとつ」とおっしゃっているのに、おばあちゃんが何個も与えてしまっては、ご両親の子育てに混乱を招きます。お孫さんを甘やかすのではなく、「ありのままを受け止める」というスタンスが大切。聞き役にまわるというのは、お孫さんを「子ども扱い」せず、ひとりの人間として尊重するということです。
一緒に何かをする時間も、宝もの
聞き役にまわると同時に、お孫さんと一緒に何かをする時間も、深い思い出を作ってくれます。難しいことでなくて構いません。一緒におやつを作る、お庭の手入れをする、近所をお散歩する、トランプや将棋をする、絵本を読み聞かせる――どんなささやかな活動でも、お孫さんと向き合う時間そのものが、何よりの贈り物になります。「おじいちゃんと一緒に作ったクッキー」「おばあちゃんと探した蝶々」――そんな思い出は、お孫さんが大人になっても、ふとした瞬間に思い出されるはずです。
とくに、ご自分が長年続けてきた趣味や得意なことを、お孫さんに教えてあげる時間は格別です。書道を教えてあげる、編み物の基本を伝える、料理のレシピを一緒に作る、昔の遊びを教える、地域の歴史を語る――どんなことでも、おじいちゃんおばあちゃんならではの「教えられること」があります。お孫さんに教えるという体験は、ご自分にも新しい喜びをもたらしてくれるもの。「教えるって、自分の人生を振り返ることでもあるのね」と感じる方も多いと言われます。技を伝えるだけでなく、その背景にある「考え方」や「生き方」までも、しずかに伝わっていくのが、教える時間のいちばんの豊かさです。
離れて暮らしていてなかなか会えない時には、お手紙やLINEのメッセージで気持ちを伝えるのも素敵です。お孫さんの誕生日に手書きのカードを送る、運動会や発表会の前日に「がんばってね」とひと言メッセージを贈る、何かの記念日に小さな絵葉書を出す――そんなささやかな心配りが、お孫さんの心にじんわり残ります。デジタル全盛の時代だからこそ、おじいちゃんおばあちゃんからの手書きの温かさは、何ものにも代えがたい価値があるのかもしれません。返事が来なくても気にせず、こちらから一方的に届ける――それも愛情のひとつの形です。
学童期のお孫さんとの関わりで、もうひとつ心がけたいのが「比べない」ということ。「お兄ちゃんはこうだったのに」「お姉ちゃんはもっとよくできた」――気軽に口にしてしまいがちな比較の言葉は、子どもの心をしずかに傷つけることがあります。一人ひとり違う子どもたち、それぞれの良さを見つけて、その子だけの個性を認めてあげる――それが、おじいちゃんおばあちゃんならではの、深いまなざしです。「あなたのこういうところが大好きだよ」「これは○○ちゃんならではだね」――そんな言葉をかけてもらった子どもは、自分の存在そのものを愛されていると感じ、自信を持って育っていきます。
学童期は、お孫さんの人格が大きく形作られていく大切な時期。そのなかで、おじいちゃんおばあちゃんが「いつでも話を聞いてくれる、安心できる存在」でいてくれたら、お孫さんはどれだけ心強いことでしょう。会える時にしっかり聞いてあげる、電話やビデオ通話の時もゆっくり耳を傾けてあげる――そんなささやかな積み重ねが、お孫さんの心の根っこを深く育てていきます。お孫さんが大人になった時、ふと思い出すのは、立派なプレゼントよりも、「あの時、おばあちゃんが黙って聞いてくれた」という、しずかな時間の記憶かもしれません。聞くということは、何もしないことのようでいて、実は何よりも豊かな愛情のかたち。今度お孫さんに会った時は、ぜひ「学校どうだった?」と尋ねて、その答えを最後までゆっくり聞いてみてください。