フェリーで渡る、ゆっくりとした海の上
飛行機とはちがう、海風を感じる移動時間。デッキで星を見たり、食堂でお酒を一杯。船旅の魅力を初心者の方にお届けします。
公開日: 2026年7月1日
飛行機なら一時間で着く距離を、フェリーでは半日、一晩かけて渡る――。そう聞くと、「ずいぶん時間がかかるのね」と感じる方もいらっしゃるでしょう。けれど、その「時間がかかる」こと自体が、船旅の最大の魅力です。海の上のゆっくりした時間、デッキで感じる潮風、食堂でいただくお食事、夜空にきらめく無数の星――。目的地に着くまでが、もう一つの旅になる。今日は、フェリーという乗りものの魅力を、はじめての方にもやさしくお伝えします。
日本のフェリー、いろいろな航路
日本は四方を海に囲まれた島国ですから、フェリーの航路もたくさんあります。短いものでは数十分の渡し船から、長距離では一晩から二晩を船上で過ごす大型フェリーまで、距離や用途もさまざまです。
たとえば、東京から徳島・北九州を結ぶ「オーシャン東九フェリー」や、大阪から鹿児島の志布志、宮崎を結ぶ「さんふらわあ」、神戸から大分・松山を結ぶフェリーなど、長距離航路では夜に出港して、翌朝には目的地に着く――いわゆる「シーズク」(船で過ごす旅)が楽しめます。北海道と本州を結ぶ「青函フェリー」、瀬戸内海を巡るフェリー、九州内を結ぶフェリーなども、それぞれに表情が違います。
船の種類によって、過ごし方もずいぶん変わります。
- 短距離フェリー(数十分〜数時間):デッキで景色を楽しむ
- 中距離フェリー(半日):軽食を取りながらゆっくり
- 長距離フェリー(夜行):個室・大浴場・レストラン完備
- 離島航路:島と島を結ぶ、生活の便としての船
- 観光フェリー:展望デッキやイベントが充実
ご自分の旅の目的やご体力に合わせて、無理のない航路を選んでみてください。
船上での過ごし方、シニアにやさしい一晩
長距離フェリーの楽しさは、なんといっても船内のゆったりした時間です。夕方に乗船すると、まずは船内をぐるりと探検――どこに大浴場があるか、レストランの位置はどこか、自分のお部屋への戻り方は――ひとめぐりすると、まるで小さなホテルに泊まっているような気分になります。
夕食は、船内のレストランで。日が暮れていく窓のそばに席をとって、ビールやお酒を一杯。船によっては、その土地の名物料理を提供してくれるところもあり、旅の始まりにふさわしいご馳走をいただけます。お食事のあとは、お風呂へ――。海の上で湯船につかるという経験は、なかなかできるものではありません。湯船から見上げる星空に、思わず声が出るかもしれません。
夜のデッキも、フェリーの醍醐味のひとつです。船によっては、夜八時や九時に「星空観賞会」を行ってくれることもあります。陸の街明かりから遠く離れた大海原は、本物の真っ暗闇。そこに広がる星の数は、地上では見られないほど。流れ星に出会える夜もあります。海風が少し冷たいので、上着を一枚ご用意になるのを忘れずに。
船酔いとお手洗い、はじめての方の心配ごと
「船旅は楽しそうだけど、船酔いが心配で」――そんな声をよくお聞きします。たしかに、波の高い日や、外洋を進む船では、揺れを感じることもあります。けれど、最近の大型フェリーは「フィン・スタビライザー」という揺れを抑える装置がついていて、想像よりずっと安定しています。瀬戸内海など内海を航行する船はとくに穏やかで、ほとんど揺れを感じないこともしばしばです。
それでもご心配な方は、出発の三十分前に酔い止め薬を飲んでおくと安心です。乗船してから、すぐに横になる――船酔いは「気持ち悪い」と思う前に、横になって体を休めるのが一番の対策です。窓のないお部屋より、海の見えるお部屋のほうが揺れを感じにくい、というのも覚えておきたい知恵です。
もう一つ、お手洗いの心配ですが、船内のお手洗いは陸上の建物と同じく、手すりがついていたり、足元のひろいタイプがあったりと、シニアにもやさしい作りになっています。お部屋によっては、お手洗いつきの個室を選べる船もあります。ご自分の状況に合わせて、予約の段階で確認してみてください。
- 酔い止めは、出発の三十分前に飲む
- お部屋は、海の見える側を選ぶと揺れを感じにくい
- 横になるのが、船酔いの一番の対策
- お手洗いつきの個室なら、深夜も安心
- 上着を一枚、デッキに出る時のために
そして、翌朝。船が港に近づくと、デッキに出て港の景色を眺めるひととき。徐々に大きくなる島影、待ち構える船員さんたちの動き、空にひるがえるカモメ――。飛行機では味わえない、ゆっくりとした「到着」の景色が広がります。「ああ、ようやく着いた」と感じるとき、目的地のへの旅というよりも、「移動そのもの」が一つの旅だったことに気づかされます。
フェリーの旅は、急がない時間を持てる方への、特別な贈りものです。お一人でも、ご夫婦でも、お友達同士でも――船上で過ごす一晩は、日々のあわただしさをいったん脇に置いて、ご自分のペースを取り戻すための、しずかな時間になります。航路や運賃、お部屋のタイプは、各フェリー会社のホームページや、お近くの旅行代理店でご確認になれます。次のお出かけに、ぜひ「海を渡る一晩」をお試しになってみてください。