指紋・顔でひらく、パスワードのいらない時代
番号を覚えていなくても画面がひらく仕組み。一度設定すれば日々がぐっと楽になる、指紋と顔認証のやさしい入り口です。
公開日: 2026年11月7日
スマホを使っていらっしゃる方なら、毎日何度も画面のロックを解除しておられるはずです。電源ボタンを押して、画面に番号を入力する――この、お決まりの動作。「四桁の数字を入れる」「六桁の数字を入れる」「短い文字列を入れる」――どれも慣れれば早いものですが、お買い物中の急ぎの時、お孫さんから動画が届いた瞬間、寒い日に手袋の指でうまく押せない時――そんな場面で、ちょっとした不便を感じることがあるのではないでしょうか。実は、最近のスマホには、番号を入力しなくても、ご自分の指紋や、お顔を見せるだけで画面が開く「指紋認証」「顔認証」という、たいへん便利な仕組みが備わっているのです。きょうは、その指紋認証と顔認証についての、やさしい入り口のお話をいたします。
指紋認証・顔認証って、どんなしくみ?
「指紋認証(しもんにんしょう)」は、その名の通り、ご自分の指の指紋をスマホに覚えてもらって、その指紋を画面の上にちょこんとのせるだけで、ロックが解除される仕組みです。指紋は、世界中で同じ模様の人がいない――そう言われるほど、お一人お一人ちがうもの。ですから、指紋でロックを開く方法は、番号よりもむしろ安全とされているのです。
「顔認証(かおにんしょう)」は、スマホのカメラに向かってご自分のお顔を見せるだけで、ロックが解除される仕組みです。スマホが、お顔の輪郭、目や鼻の位置、形などをすばやく読み取って、「あ、これは持ち主のかただ」と判断してくれます。寝起きで眼鏡を外していらしても、お化粧をしていらしても、たいていは認識してくれるほど、賢くなってきています。
もちろん、これらの仕組みでスマホに登録された情報(指紋の模様や、お顔の特徴)は、ご自分のスマホのなかにだけ保管されていて、インターネットを通じてどこかに送られているわけではありません。「個人情報が外に漏れるのでは?」と心配される方も多いのですが、最新のスマホでは、この情報はスマホの内部にしっかり守られたところに保管されていて、ほかの会社やアプリからは見られない仕組みになっています。安心して、お使いいただけるのです。
一度設定すれば、毎日がぐっと楽になる
指紋認証や顔認証のなによりの魅力は、一度設定してしまえば、その後の日々のスマホ操作が、ぐっと楽になることです。具体的にはこんな場面で、便利さを感じていただけます。
- お孫さんからのLINEがピンと鳴ったとき、すぐに見られる
- お買い物中にスマホで支払いをする時、すっと開く
- 電車のなかで地図やニュースを見たい時、もたつかない
- 暗証番号を毎回打ち込む手間がいらない
- お一人で出かけた先で、人前で番号を入力しなくて済む(防犯にも)
とくに最後の「人前で番号を入力しなくて済む」というのは、思いのほか大切な点です。お店のレジ前、電車のなか、銀行のATMの近くなど、他の方が後ろにいらっしゃる場面で、画面に大きく数字を打ち込むのは、なんとなく心配なものです。指紋や顔の認証なら、後ろから見られていても、こちらの番号は決して相手に知られません。これは、シニア世代の方が安心してスマホを使ううえで、たいへん有効な防犯対策にもなります。
また、毎日何度もある「ロック解除」という小さな動作が、瞬時に済むようになると、スマホそのものが「もっと身近な、もっと便利な道具」に感じられるようになります。スマホとお友達になる感覚――それを、指紋認証・顔認証のしくみが、後ろからしずかに後押ししてくれるのです。
設定はかんたん、ご家族と一緒に
「便利そうだけど、設定が難しそう」――そう思っていらっしゃる方も、ご安心ください。指紋認証も顔認証も、設定そのものは、ものの五分から十分で済む簡単な作業です。スマホの「設定」アプリのなかに、「指紋」または「Face ID(顔認証)」「生体認証」といった項目があり、そこを開くと、画面が一つひとつ手順を教えてくれます。
指紋認証の設定は、たいてい、画面の指示にしたがって、指をスマホの指紋センサー(ホームボタンや、画面の下のほうにある光る丸)に何度かのせるだけ。「もう少し角度を変えて」「もう一度のせて」とスマホが教えてくれるので、それに従って指をのせ続けるうちに、十回ほどでご自分の指紋がスマホに覚えてもらえます。一本だけでなく、人差し指と親指の両方、両手とも――というふうに、複数の指を登録しておくと、どの指でも開けられるので、さらに便利です。
顔認証の設定も同じで、スマホの画面に表示される丸い枠のなかに、ご自分のお顔を入れて、ぐるりとゆっくり頭を回す――それだけ。マスクをしたままでも開く設定や、眼鏡の有無に対応できる設定なども、最近の機種には備わっています。一度設定したあとも、後から「眼鏡をかけている顔も追加で覚えてもらう」などの調整ができますから、無理せずご自分のペースで慣れていけます。
もし、設定の途中で「あれ、よくわからない」と感じられたら、お子さんやお孫さん、お住まいの近くのスマホ教室、キャリアショップの店員さんに、いつでも気軽にお尋ねください。「最初の一回だけ手伝ってほしい」とお願いするのは、何の遠慮もいりません。ものの十分で終わる作業ですから、お孫さんが遊びにいらした時のおしゃべりのついでに、にっこり笑いながらお願いしてみるのもよいでしょう。
番号も忘れずに覚えておく――万一のために
ひとつだけ、大切な注意点があります。指紋認証や顔認証を設定しても、もとの「数字や文字のパスワード(暗証番号)」は、必ず併用される仕組みになっています。スマホを再起動した直後や、何回か認証に失敗した時、しばらく使わなかったあと、機種変更の引き継ぎ時――そういった場面では、必ずもとの暗証番号の入力が求められるのです。
ですから、せっかく指紋・顔で開けるからといって、もとの暗証番号を完全に忘れてしまうと、いざという時にスマホが開かなくなって困ることがあります。暗証番号は、お忘れにならないように、紙にメモして金庫や、家族にも伝わる安全な場所にしまっておきましょう。覚えやすく、けれど他人にすぐ推測されないような数字――誕生日のような分かりやすいものは避けて、ご自分なりの組み合わせを工夫されるのが安心です。
また、指紋センサーの場所に、汚れがついていたり、手が乾燥していたりすると、指紋が認識されにくいことがあります。そんな時は、指先を軽く拭いたり、ハンドクリームで少し潤しておくと、認識率がぐっとよくなります。冬場、手が冷たく乾燥しがちな季節は、とくに気にしていただくとよいでしょう。顔認証の場合も、室内が暗すぎる時、お顔の半分以上が隠れている時(マスクや帽子で)は、認識しにくくなることがあります。
指紋認証・顔認証――言葉だけ聞くと、SFのなかの未来の技術のように感じられるかもしれません。けれど、いま、シニア世代の方が当たり前のように毎日使えるくらい、身近で簡単な技術になってきています。スマホを使い始めた頃には想像もしなかった便利さが、ほんの数年で当たり前になっていく――それが、いまの時代のスピードです。とはいえ、急いで何でも取り入れる必要はありません。「便利そう」「ちょっと試してみたい」と感じた時に、お子さんやお孫さんと一緒に、ゆっくり設定してみるところから始めてください。一度慣れてしまえば、これまでの「番号を毎回入力する暮らし」には、もう戻れなくなるはずです。スマホを開けるたびに、ふっと指をのせるだけ、お顔を向けるだけ――そんな小さな便利が、毎日の暮らしのちいさな喜びになっていきます。お孫さんからの動画が、ぱっと開いて、ぱっと観られる――そんな何でもない瞬間が、お年を重ねた毎日の、しずかなしあわせのひとつになりますように。